初体験出来て喜びもつかの間
まさかの出来事が・・・
今から8年前あの当時、僕が20歳、彼女が19歳の時でした。
付き合って一年ぐらい経過していました。
共に経験がなく、彼女の意向で、
結婚するまではしたくない
との事で、私は我慢するしかなかったのです。
そして、初めて迎えるクリスマス。
彼女からのプレゼントは自分自身だって。
横浜の夜景が見えるホテルの部屋をとってくれてました。
私は、ずっとこんなシーンに憧れていました。
これはチャンス。
この「入れたい」「イイよ」っていうワンシーンを再現できるかも!
その時、彼女は既に悲壮な決意を固めていたとは全く気が付かず、
彼女を抱けるチャンスだと、違う覚悟を決めていた僕。
その後、待ち受けていた運命を、僕は知る由もなかった・・・
「そんなお金よくあったなー」と、思いつつウキウキ気分でクリスマスイブを迎えました。
お互い初めてでぎこちないながらも、なんとか交わることができ、痛かったのか、彼女は涙をながしていました。
でも、それが最初で最期になるとは・・・
その時の彼女の涙の意味すら、知る由もなかったのです。
新年を迎え1月4日。
まだ一度も会ったことのない彼女の両親に、病院に呼び出されました。
「妊娠でもしちゃったのかなー」なんて思いつつ、
ビクビクしながら病院に行ったのを覚えてます。
お父さんから
「キミが◯◯君か、キミには悪いことしなたー」
「いったいなんのことですか?」
「娘はもって3ヶ月の命だとのこと。病名は急性白血病だ・・・」
沈黙が流れ、ただ涙がこぼれるだけでした。
病室に行くと、そこには無菌室のビニールシートで覆われた彼女がいました。
普通の人と変わらない健康そうな彼女が、
ただ一枚のビニールで隔てられ、触れることも出来ず、
ビニール越しに手のぬくもりを感じるだけでした。
病気を治す唯一治療法として骨髄の移植しかありませんでした。
しかし、結果として両親・妹も骨髄が一致せず、
あとは骨髄バンクのドナー待ちとなりました・・・
1月後半ともなると、徐々に体も衰弱していき、
悪いことに肺炎を併発してしまいました。
僕も出来るだけ病院に行き、
出来るだけ一緒にいようと思い彼女を励ましました。
しかし、励ましてもどうにもならないことは知っていました。
肺炎を伴いながらも2月を迎え、そして運命の時は突然やってきました・・・
夜9時ぐらいにお父さんから電話があり、僕は病院へ急ぎました。
病室に入るとすでに、両親と妹、そして主治医と看護婦数名が。
なにが起こってるかは、すぐに察しがつきました。
彼女は小さな声で僕を呼んでいて、何かを言っており、
主治医の許可の元、僕は近寄り、彼女の口元に耳を近づけました。
「今まで・あ・り・が・と・・・」
僕との会話はそれが最期。
ほどなくして彼女の意識はなくなり、20分後ぐらい天国へ逝きました・・・
なぜか、涙も出ることがなく、
ただ、漠然と彼女との思い出を振りかえる自分がそこにはいました。
くしくも、その日はバレンタインデー。
彼女がお母さんに預けていた手紙とチョコを頂きました。
その手紙の内容は詳しくは書きませんが、
すでにイブの日に病気にかかっていた事、
女になりたかったとの事が書かれていました。
今思えば、浮かれた気分でイブのデートをした自分が恥ずかしい・・・
なぜ、お金もなかったはずなのに高級ホテルだったのかも、
今となっては腑に落ちる・・・
あれから4年後僕は結婚しました。
妻にはすべてを話し一緒に涙を流してくれました。
女の子も生まれ、なんと妻の提案で彼女の名前を付けてくれました。
感謝しているよ。
毎年2月14日には家族3人でお墓参りしています。